ジレッタント 彷徨と喜憂

物見遊山が好きです

井の頭公園 写真家の生き方

 

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 かなり前のことなるが、東京・井の頭公園で毎週日曜日に露店が並んだ。

 

 

 

 今でいうフリーマーケットとは違う。

 

 

 

 使用済みのものの再利用・出品ではなく、手作りの品物を出品するという催しだった。その中にはもちろんリメイクもあった。

 

 

 

 品物だけではなく、似顔絵師や占い師も多くいた。デビュー間もない音楽家たちもいた。

 

 

 上の写真は20年以上経っているので、色褪せや反りがあって、良い状態ではないが、

プロのカメラマンが撮っている。ある日の催しで、この写真を購入した。

 

 

 この写真も大掃除で再発見したものだ。

 

 

 

 スキャンした方が良く見えるはずだが、著作権の問題もあるので、カメラで撮った。

 

 

 以前、有名若手カメラマンの講演を聞きに行って、壇上に飾ってあった作品をカメラで撮り、その写真を貼って感想文を書いた。後でカメラマンに読んでもらったが、何のクレームもなかった。このため、おそらく許容の範囲だと思う。

 

 

 舞台は中央アジアだったと記憶している。

 

 

 カメラマンは無口だった。

 

 

 地面に敷いたマットに写真をたくさん並べていた。

 

 

 

 スタジオを持っているかと聞くと、「ゴーストやっている」と答えた。

 

 

 

 びっくりした。有名写真家のゴーストをやっているというのだ。

 

 

 

 いわゆるアート作品としての写真とは異なり、ピントがものすごく合っている。

 

 誰の代役かと問うこともなく、この2枚を購入して帰宅した。

 

 

 

 

 別の日にこの井の頭公園で遭遇した写真家から作品を3枚購入した。ここでは作品を掲載しないが。

 

 

 

 30分間ほど雑談をした。作品集も見せてくれた。帰り際には、住所と電話番号を書いたメモ書きをもらった。

 

 

 

 アメリカの美術学校を卒業したばかりだと言っていた。

 

 

 

 

 それ以来、会ってはいないが、ネットで検索すると、女優やアイドルの写真集を手がける売れっ子になっている。

 

 

 あのゴーストの写真家は、当時、還暦前後の年齢に見えた。

 

 

 存命なのだろうか。

 

 

 仮に会ったのが今だったら、もっと実りのある話ができるような気がする。

 

Starckとペン

 前々回の記事で書いたように、年末の大掃除で再発見したモノを紹介したい。

 

 

 

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 鉛筆とボールペン。

 

 鉛筆の方は無印良品の製品のように見えるが、そうではない。

 

 

 スターデザイナー、Philippe Starckが1998年にセブンイレブンのためにデザインした製品だ。

 

 

 

 覚えていませんか。そういうことがあったことを。

 

 

 

 捨てずに取っておいた理由がわかるような気がする。

 

 

 

 何と言っても、出来栄えが良い。

 

 

 

 

 他のプロダクツも店頭に並んでいたと記憶しているが、購入したもので残っているのは、この3本のペンだけとなった。

 

 

 

 

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 勢い余って、ペリアンのトレイに飾ってしまった。

 

 

 

 このオリジナルのトレイは、1998年に渋谷のドレステリアで購入したもの。大掃除で再発見したものではないが。

 

 

 安価だった。

 

 

 たくさんストックがあった。全部オリジナル。

 

 

 近年復刻されたウオールランプのNEMOのオリジナルも、安価でたくさん並んでいた。

 

 

 良い時代だったのだろう。

 

 

 

 別の言い方をすると、商売の才覚がある人たちにとっては、ビジネスチャンスだったと思う。

 

 

 

 1990年代に、アメリカ人のビジネスマン=家具愛好家が、借財をして、まったく評価されていなかった、ジャン・プルーヴェを世界中で買いまくり、大きな倉庫に保管した。

 

 

 

 日本で最初に嗅ぎつけたのは、マイスターの高坂氏とその周辺だったと思う。2000年にプルーヴェの展覧会(販売はしない)が、マイスターのそばにあったギャラリーで行われた。

 

 

 

 

 しかし、すでにその時は、どのプロダクトも高額だった。

 

 

 

 10年経たないうちに、アメリカ人のビジネスマンは、投資額の数倍を回収していたことになる。

 

 

 

 日本国内のビンテージものを扱うショップやオークションなどのネット情報で、JUMOのシンプルなランプが、ペリアンのデザインと紹介されていた。

 

 

 

 そうだ、アイリーン・グレイのものも大々的に紹介されていたことを、今思い出した。

 

 

 

 オリジナルをパリから取り寄せたら、国際郵便で輸送中、ネックの根元がパキっと折れてしまった。

 

 

 ほどなくして、このランプはペリアンのものではないことが判明した。

 

 

 

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 これは、南青山にあった、E&Yのカタログ。大掃除で見つけた。

 

 

 

 スタルクの右腕だったCHRISTOPHE PILLETのもの。

 

 

 

 カタログとは思えないほどの出来栄えだ。

 もはや紙媒体メディアと呼んでも過言ではない。 

 

 

 

 プロダクツは、こちらで詳しく取り上げられている。

 

 

www.eandy.com

 

 今見ても格好いい。

 

 

 しかし難点は、拙宅の住宅設計に合わないことだ。

 

 

 ハウスメーカーだけれど、バウハウス研究を極めた会社だったので、拙宅の内装には、北欧やドイツあたりのプロダクツが一番似合っている。

 

 

 

Lyle Maysが遺したもの

2回連続で音楽のことを書きたいと思う。

 

 

以前から書きたかったことだったが、もう片方で手掛けている音楽ブログは、インディペンデントに焦点を当てているので、正直なところ書きづらかった。

 

よくよく考えると、このブログに書くのは相応しいと思う。

 

 

 

 

2020年の早春だっただろうか。

 

 

地元の行きつけのコーヒーショップで、常連さんが

パット・メセニーが亡くなった」と言っていた。

 

 

 

驚いて帰り道にスマホで調べると、パット・メセニーの音楽パートナーの

ライル・メイズが亡くなったということだった。

 

とてもショックだった。

 

 

最初に聴いたのが、1983年のパット・メセニー・グループのライブ盤

「トラベル」だった。

 

 

 

 

このアルバムを、過去に聴いた音楽の中に、どのように位置付けるか戸惑いがあった。どの音楽とも違っていたからだった。もちろん、あとでフュージョンと呼ばれる音楽とも違っていた。

 

 

ほぼ40年経った今でも聴き続けるほど、変わらない輝きを保っている。本当に永続性がある音楽だ。

 

 

ライル・メイズは学究肌の音楽家だと思う。

 

 

 

残念ながら、彼が説いたセオリー等は筆者には理解できないが、ある年齢以上の、アカデミックな教育を受けたピアニストの多くが彼のハーモニーから大きな影響を受けている。

 

 

時々耳にするピアノの音に「ああ、これはライル・メイズ」と思うことが良くあった。

 

 

いずれのピアニストも芸大卒や音大卒だった。

 

 

 

彼は白人の上質な音楽を体現していた。

 

このため、4ビートよりも、16ビートで本領を発揮したと思う。

 

 

 

速く(速引きではない)、長いパッセージは本当に独特だった。マイナーコードの楽曲から溢れ出てくる美しい旋律に浸る時間は至高のひとときだ。

 

 

 

彼は、ビルエバンスもポール・ブレイも、キース・ジャレットも聴いていた。

 

 

 

1993年にリリースされた、ソロアルバムのFictionaryの1曲目のタイトルは、Bill Evans

 

 

 

Blue in greenのコード進行に倣うパートが目立つ。

 

 

 

ライル・メイズは、Blue in greenの作曲者は他でもないBill Evansと宣言したのだと思う。

 

 

パット・メセニーとの共作アルバムでは、September 15thという曲を披露している。

9月15日は、Bill Evansの命日だ。

 

 

youtu.be

 

 

パット・メセニーの当時のマネジャーがユダヤ系だったこともあり、

メディア露出は不得手ではなかった。

 

 

 

 

キャリア初の主役を射止めた、弱冠30歳のケヴィン・コスナーは、すでに大器の片鱗を表している。

 

 

 

streamable.com

 

mona lisa Gary Peacock

 

 

筆者がファンだった、音楽家ゲイリー・ピーコックは一昨年亡くなってしまった。

 

 

一度だけライブを見に行ったことがある。1999年だったと記憶しているが、

会場はサントリーホールの小ホールだった。

 

 

アノトリオのライブで、ウッドベースゲイリー・ピーコック、ドラムスはPaul Motianポール・モチアン)だった。

 

 

この2人がピアノトリオで演奏するのは滅多にないこととされている。

 

 

レコード・CDの記録媒体で残っているのは、Bill EvansPaul BleyKeith Jarrett、Marrilyn Crispell、Marc Copland、Martial Solal、菊地雅章の7人(いずれもピアニスト)だけだ。

 

オファーはたくさん来たと思うが、明らかに共演者を選んでいたのだろう。

 

 

このビデオのピアノトリオのドラムスはポール・モチアンではないが、ゲイリーはキースジャレットとともに、Keith Jarrett Standard Trioとして独レコード会社のECMで多くのアルバムを残している。

 

多くのスタンダード曲の中でも、このモナリザはとても胸に来る。

 

冒頭でゲイリーがメロディーを奏でる。

 

 

何でもないようなことに思えるが、ゲイリーがこんなに長い時間、メロディーのほぼ全曲をピチカートするのは極めて珍しいことだ。

 

 

あれほど難解なベースラインを弾く演奏家が、こんなに素朴なメロディーを一音一音奏でている。

 

本当に奇跡的だ。

 

 

このライブ演奏はCDになっている。しかし、この冒頭のゲイリーのソロはすべてカットされている。

 

 

恐らく、ECMレーベルのカラーとして似つかわしくなかったのだろうと思う。

 

途中で突然、ゲイリーが敢えて数音加え、原曲のメロディーを外しているが、キースは見事にこれに応じている。

 

ゲイリーは生前、「一晩(の演奏)で一音だけでも良い音があればそれで良い」と言っていたそうだ。

 

 

大掃除で見つけたもの① NORWEGIAN ICONS

年末に大掃除をした。流行(はやり)の断捨離とまではいかないが、

およそ20年ぶりに、不要なものを取捨選択した。

 

書類ケースや使わなくなったSDカードの中に、ずっと置きっ放しになっていた

ものを見つけた。

 

見つかって良かった。危うく捨てるところだった。

 

ブログのネタが尽きたわけではないが、大掃除中に再発見したものをしばらく

取り上げて見たいと思う。

 

まずはSDカードに入っていた画像。衣装ケースに眠っていた、これに関連する品物をお見せしたい。

 

 

画像の撮影日の日付は2013年7月7日となっているから、8年6ヶ月前になる。

 

以下は、代官山のヒルサイドテラスのギャラリーで”NORWEGIAN ICONS”という催しが開かれた際に撮影した画像。

 

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1940年代~1975年代のノルウェーデザインのアイテムが展示され、ノルウェーの著名デザイナー・作家を紹介する展覧会だった。家具や器、アート作品など100点ほどが展示された。

 

ノルウエーで2万人を動員した後、東京で開催され、この後、ニューヨークに巡回されたという。

 

基本的に撮影はOKだったが、今考えるともっと撮っておけば良かったと後悔している。

 

3枚目は、ムンクだったと記憶している。

 

ノルウエーのコーヒーショップの東京ブランチ、”FUGLEN TOKYO”が店内でこの催しを告知していた。渋谷の富ヶ谷にオープンして数年経った時だった。今、このお店は混んでいて座れないことが多いが、開店当時は客がほとんどいなかったので、よく通った。

 

FUGLENは”NORWEGIAN ICONS”の主催者のひとつ。

 

 

5年ほど前に行ったときに、この店の並びに、古民家を改装したノルウエービンテージ家具店が開業していたことを思い出した。

 

 

北海に油田が発見されて国が潤ったため、却って、他のスカンジナビア諸国に比べて、デザイン・意匠に力を入れて国力を増大させる必要性がなかったと島崎信氏(北欧デザインのパイオニア)は、「ノルウエーのデザイン」で記している。

 

2000年代に入って、ノルウエーのデザインが躍進し、NORWEGIAN ICONSの開催に至ったと解釈して良さそうだ。

 

同じくらいに、ノルウエーの音楽、敢えて言えば、ジャズフォーマットに少し寄った即興音楽が、世界的に流行した。

 

まあ、流行したと言っても、ヒットチャートなどにランクインするというものではない。

 

音楽雑誌で取り上げられたり、業界で話題となったり、といった具合だった。

 

 

このブログを書いている間に聴いていた音楽は、

Christian Wallumrod Ensemble "The Zoo is Far"

Susanna and Ensemble neoN "The Forester"。

 

どちらもノルウエーの音楽家のCDだ。

 

派手さはないが、良い音楽だ。アンサンブルとある通り、室内楽的な要素が強い。

 

 

 

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上のトートバッグが、NORWEGIAN ICONSの会場で販売していたアイテム。

未使用だが、収納の仕方が悪くクシャクシャになってしまった。

 

 

でも、OSLO、TOKYO、NEW YORKって並び、良いと思いませんか。

 

2010年代後半から、この組み合わせは想像できなくなっているような気がする。

 

 

村井 啓哲 「LUX / MW」

早いもので、展覧会開催(於 外苑前ギャラリー360°)から1年半が経った。

すぐにブログに書く予定だったが、仕事が多忙だったこともあり、

手がけている音楽ブログともども、更新が滞ってしまった。

 

 

 

ロウソクの灯の揺らぎを音に変換して聴く、マルチプルのお披露目だった。

より簡略化したマルチプル作品はすでに発表されている。

 

 

村井氏は、電子回路/機器の反制御的操作によるサウンドパフォーマンスを行うほか、視覚的な作品も発表している、美術家・音楽家

 

 

 

7月8日〜 11日の期間中は、村井氏が常駐して作品の説明を行ない、来廊者一人ひとりが視聴する機会を得た。

 

ロウソクの炎が、電子変換されて、サウンドとして再現される。

微音の電子音が、視聴者の耳をそばだてる。

 

そのうち、まるで永遠に続くかのような気持ちになる。

 

しかし、それは錯覚だと知る。

 

およそ10分間で炎は燃え尽きた。

 

 

 

微音と混濁とした視覚に満たされた空間は、強烈な印象を与えるものだった。

 

 

 

フルクサスジョン・ケージに深く関与している村井氏は、

マルセル・デュシャンの目指した偶然性と氏のマルチプル作品との関係性を問う質問には否定的だった。

 

 

代わりに、ジョン・ケージとの親和性を語った。

 

 

 

この後、下落合のSOUPで、ライブイベントが行われたという。

 

 

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小杉武久展   ローレンス・ウェイナー逝去

昨日、外苑前のギャラリー360°に行ってきた。

コロナ禍の影響もあり、久々の展覧会が開催された。

 

2019年に逝去した小杉武久を偲ぶ展覧会が同年の夏に催された。

その時も見学しに行ったが、今回は3回忌を追悼する回顧展が開かれたので、駆けつけた。

 

残念ながら、追悼の意味を込めた資料集「KOSUGI 1992」は完売していた。

しかし、ゼラチンシルバープリントの展示や録音媒体などを堪能することができた。

 

 

 

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ディレクターと1時間ばかり談笑した。

そこで、ローレンス・ウェイナーが12月2日に逝去したことを知った。

とても驚いた。

 

聞くところによると、ローレンス・ウェイナーはルイ・ヴィトンと契約し、

商品のデザインに取り入れられる段取りだったという。死の直前まで、ルイ・ヴィトンとやりとりしていたという話だった。

 

 

ルイ・ヴィトンとアーティストの協業は、古いところでは、村上隆草間彌生モノグラムが有名だが、ローレンス・ウェイナーが選ばれるとは思っていなかったので、これも驚きだった。

 

 

 

業界人の情報という話だった。

内密の世間話かと思ったが、ディレクターは「検索したら出てくるかもしれない」とアドバイスをくれたので、帰路の電車の中でスマホで検索すると、秋冬のコレクションに加わっていた。

 

 

 

誰が最初にやったから、誰が先鞭を付けたからという話は、いわゆるマウントを取る類のトピックスになりかねないので、書くのはやめようかと思ったが、

筆を執ることにした。

 

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画像は、1999年にこのギャラリーで開催されローレンス・ウェイナーの展覧会のフライヤーだ。

 

ギャラリー360°は、一昨年まで、表参道の交差点そばのビル2階にあった。

一等地にも関わらず、比較的広い展示スペースがあった。

 

筆者も、同年のローレンス・ウェイナーの展覧会に行った。

 

同ギャラリーは1997年にもローレンス・ウェイナーの展覧会を開いているという。

 

 

 

しかし、当時、私はローレンス・ウェイナーの作品の価値が良く分からなかった。

記憶が確かならば、2000年代にも、展覧会もしくは展示会があったと思うが、

その時も私の身体に入り込んでくる「何か」は希薄だった。

 

 

一昨年、ギャラリーでローレンス・ウェイナーの古い年代のリトグラフが多数、取り扱われた。

 

 

この時、私は初めて、ローレンス・ウェイナーの作品を購入した。

 

 

きっと、20年経って初めて、その価値が分かったのだと思う。

 

 

昨年のことだと記憶している。

 

ギャラリーに、ローレンス・ウェイナーの顔の写真が額に入って飾られていた。

ディレクターに聞くと、「ローレンス・ウェイナー本人のサイン入りなので、カメラマンはプロではないはずだ。本来ならば、(サインを入れようとするならば)カメラマンのサインのはずだが」ということだった。

 

 

購入を決めて、訪廊した。

 

しかし、最早そこに写真はなかった。

 

 

 

ディレクターから訃報を聞いて、直ぐにそのことを思い出した。

 

 

 

「ギャラリー360°が日本で最初に取り上げて、市場を広げましたね。先鞭者だと思いますが」

 

 

ディレクターは、何も反応しなかった。

 

 

きっと、本当にローレンス・ウェイナーの作品を愛していたのだろう。

 

 

 

 

11月初旬 秋深まる信州

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11月の初旬に信州を一人旅した。

 

木立が秋色に色付いていた。

春から夏が良いと思っているが、秋も味わい深い趣がある。

 

ここは、私が20代の前半から通っている喫茶店のテラスだ。

 

オープン直後に通いだしたが、その頃はテラスが無かった。

 

 

 

独特の雰囲気から、店のエントランスアプローチがテレビコマーシャルで使われたり、雑誌で大々的に取り上げられたりしているので、撮影は避けた。

 

 

駐車場がいっぱいなうえに満席の場合が多く、入店できないことも珍しくない。

 

 

この日の客は私ひとりだった。

 

 

昔を思い出すわけでもなく、テラス席に座って、ただぼんやりと庭を見ていた。

 

とても良い時間だった。

 

 

 

国分寺でんえん 展覧会

東京の国分寺市は、国分寺跡が発掘されて残されるほどの、その名の通り古い町だ。

駅周辺の市街地は以前、そうした町にふさわしい店が並んでおり、よく訪ねたものだった。

 

バー、喫茶店、古本屋、中古レコード店、ライブハウス、雑貨店等々。

 

 

作家の椎名誠作「さらば国分寺書店のオババ」にある通り、駅前には老舗の古本屋があった。稀覯本も扱うなど、高くて買えないほどだったけれども。

 

 

 

村上春樹が作家としてデビューする前にジャズ喫茶を経営していたが、お店は駅の近くにあったそうだ。行ったことはないが、跡地は知っている。

 

 

 

昔から中央線文化という括りがあり、国分寺はその中心地のひとつであったことは間違いない。1990年代の前半にはよく馴染みのお店をハシゴしたものだった。

 

 

 

ブラジル音楽ばかりをかけるお店があって、「ジョアン・ジルベルトが日本に来ると言っている」という話を聞いた。業界人の話題になっていたようだ。

 

 

「あの人のことだから、気が変わると思うが」

 

 

1992年のことだった。

 

 

 

実際に初来日を果たしたのは、2003年だった。日本に行きたいと言ってから、

幾度も気が変わってようやく11年後に初来日となった。

 

 

 

 

駅舎が新しくなってから一変して、再開発の波が訪れて以来、少なくとも筆者にとっては面白みのない町になってしまった。

 

しかし、未だに贔屓にしているお店がある。

 

茶店「でんえん」。

 

 

文化人や芸能人にも愛されながら、今年で創業64年を迎える。

 

流れる音楽はほぼ100%クラシック。ごくたまに、南米の音楽が流れることもある。

店の壁には、洋画が飾ってある。

 

 

常連には、筋金入りのクラシック音楽ファン、芸大、美大のOBが多い。

 

 

 

1990年代には、毎週のように絵画の展覧会が催されていた。美大生やアマチュアやプロの卵の画家が自作を飾り、店番のような感じで椅子に腰掛けていた。

 

 

院生だった画家の卵の人とは何度も話して、作品も購入した。

2000年代の初めには、銀座の画廊で個展を開く際に招待状をいただいた。

 

 

今の世の中、芸大や美大で絵画を専攻しても卒業後には、生活できないそうだ。

ほんの0.1%の人たちを抜かして。

画廊の数も激減した。

 

 

そうした時代の流れもあり、展覧会が開かれることもなくなった。

 

 

まあ、そういう話はともかくとして、本題に移りたいと思う。

 

 

一昨年2019年と今年2021年に、この場所で展覧会を開いた。

 

 

とはいっても、筆者は絵を嗜むわけではない。

 

 

 

けれど、店主の新井さんは「最近、絵をお描きになった?」と時々、筆者に尋ねる。

 

 

 

 

いっそのこと画家を気取って、20数年にわたって収集した絵画等を飾ってもらった。

 

 

 

 

 

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以上が2019年の展覧会の時の写真。

 

 

 

 

以下が今年の展覧会。

 

 

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2019年の展覧会は、常連客の評判が良かった。目が肥えた人たちから評価されるのは嬉しいものだ。

 

 

一番高価な絵画は、最初の写真のもの。ところが、この絵はあまり評価されなかったという。

 

 

もっとも高評価だったのが、この「でんえん」の展覧会で購入した作品だった。美大OGで(当時)美術教師の人が描いたもので、純粋な洋画というよりも、ラウシェンバーグのような感じの油絵だ。

 

 

個人的にも一番気に入っている作品だったので、妙に納得した。

 

 

この絵画は、大手広告会社のディレクターが気に入り、作家本人に直接掛け合って、購入を決めかけたが、筆者の購入予約が優先されたという変わった経緯がある。まあ、写真を載せなかったけれど。

 

 

 

3枚目の山の絵は、贋作そのもの。

本物は、銀座の日動画廊クラスで取り扱うレベル。

 

 

 

日動画廊のオーナー夫人は、アンディ・ウォーホルが題材にして版画作品にしている。

 

 

あとで作品が本人から送られて来て、請求書が同封されて、とても驚かされたという話は有名だ。

 

 

それはともかく、本物だと信じていると、そういう風に見えてくるのは、本当に不思議だ。

 

 

4枚目の作品も思い出深い。

 

 

向かって右は、阿部中夫さんのデッサン。もう亡くなってしまったが、地元で活躍した画家で、一水会所属だったと思う。ご本人から購入した。お礼の手紙をいただいた。その後も展覧会を見に行ったことが懐かしい。

 

 

 

この間、店主の新井さんから、「また、展覧会をおやりにならないの」と聞かれた。

 

 

 

 

そのうち開催したいと思う。

 

 

 

 

 

 

MMoP

長野県御代田町の旧メルシャン美術館の跡地では、大手ストックフォト、amanaの主宰で2018年、2019年夏季に写真展覧会”photo miyota”が開かれた。

 

確か2019年だったと記憶しているが、amanaと御代田町との間で協定が結ばれ、跡地に写真ミュージアムが開館すると発表された。建築物をほぼそのままリノベーションするという。

 

待ち侘びていたが、コロナ禍もあり、開館は延期されたようだ。一説によれば、2022年にオープンするようだが、本当のところはわからない。

 

主のミュージアムに先駆けて、昨年あたりから、跡地にひとつ、ふたつ、三つと商業店舗が開店した。

 

 

複合ミュージアムの名前はMMoP(モープ)。

MVRDVやMoMAに語感が何となく似ている。

 

 

 

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最後に開店したと記憶しているが、スウェーデン(北欧)インテリアショップが今年にスタートした。名前は"lagom"。スウェーデン語で、「ほどほど」の意味だという。中軽井沢のハル二テラスや塩沢湖そばにある、"natur"の系列店で、オーナーは日本人。

 

 

すでに個人ブログなどでも大々的に取り上げられていることもあって、店内の撮影は許可された。

 

 

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photo miyotaでは、エントランスルームとして使われていた建屋をリノベーションしている。

 

 

 

 

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ハル二テラスのnaturと同様、Carl Malmstenが人気という。

Carl Malmstenは、スウェーデンの家具ブランド。

 

聞くところによると、本国では顧客の身長などの体型に合わせて、ソファをカスタムメイドしているらしい。

 

 

 

 

 

写真を撮ろうと思い付いたのは、このコーナーの光の入り方が印象的だったから。

 

 

残念ながら、うまい具合に再現できなかった。

 

 

画像を加工しようと思ったが、無粋なので止めた。

 

 

これが私の写真の実力で、カメラの限界でもあるのだろう。

 

 

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品揃えが良い。

古いものと新しいもの。クラフト、ビンテージ家具、衣類、写真。どれも魅力がある。

店員の方々の対応も気持ち良い。