いくぶん下品ですが、なぜかそんな感じのタイトルが欲しいと思っていました。
音楽事情というよりも、関心や好みから演繹させて、俯瞰的に見るという
少し背伸びするような構想を思いつきました。
休みに入ったことで、久しぶりに仕事から解放されて、きっと心に余裕が出てきたのでしょう。
本題に入りたいと思います。
2006年に「バベル」に出演し、ハリウッド女優として衝撃的なデビューを果たした菊地凛子が、今から10年前の2014年に出した歌手デビューアルバム「戒厳令 rinbjo」の1曲目が、この曲である。
CD発売後は、私の知る限りでは、YouTube上では公開されなかった。
昨年の秋頃に公開されたと記憶しているが、
何度見ても、視聴回数が45に留まっている。
私は、CD発売直後にCDを購入して聴いていた。
思い切り下品なラップだと思う。卑猥で猥雑、そして下品。
でも音楽的に見ると、いや聴くと、10年前の曲と感じさせるほどまで古臭くない。
そればかりか、今のバズっている音楽よりも遥かに新しいと個人的には思っている。
菊池凛子の相手方は、ジャズピアニストの市川愛。正統派なピアニストだが、
こんな感じのラップをやっていて良いものだろうかと心配したが、
最近は正当なジャズに戻っているようだ。
そして、か細い男性のラップが、ジャズ演奏家の菊地成孔(きくちなるよし)。
ジャズ の分野で活躍する、菊地成孔がプロデューサーとして全曲を書き、アレンジしている。
菊地成孔といっても、誰のことかわからない人がほとんどだと思うので、
少し紹介したいと思う。
モバイルゲームの「ガンダムサンダーボルト」の音楽を担当したことで、
はじめてジャズを聴いた若者や中年が大勢いたそうだ。
このゲーム音楽のメインテーマは、初期のフリージャズっぽいところがあり、取っ付きにくいため割愛した。
オーソドックスなジャズボーカルだが、演奏しているのも、歌っているのも日本人だ。
次に有名なのが、UAとのコラボ作品。
2006年にはUAをボーカルにフィーチャーした「Cure Jazz」をプロデュースした。
アントニオカルロスジョビンの曲「Luisa」を菊地成孔とUAが唄っているが、菊地凛子のデビュー曲を聴いた後で、これを聴くと、同じ音楽家がこんなに上品に仕上げていることに驚きを感じるほかない。
ちなみに、ストリングスアレンジも菊地成孔自身が譜面を書いて、生演奏させている。
プロトウールではなく、音楽的な教養や素養がなければ、こうした譜面は書けない。
驚きだ。
音楽的な素養があったうえで、菊池凛子のデビューアルバムを下品で猥雑に仕上げた。
いわば確信犯だと思う。
コンピュータ上でコピペしながら、音楽が簡単に作れる時代にあっては、
音楽的な素養も何も無いはずだが、新しさというものは技能や素養、知識が無い人には
実現し得ないものだと考えている。
音楽についても同じことだと考えている。
数年前に菊地成孔自身がオーケストラアレンジで影響を受けたと言っていたのが、
清水靖晃のこの作品だ。
素晴らしい。
だが、この曲の視聴回数も1526回だけに留まっている。
こちらも、リアルタイムで聴いた。1983年にリリースされた作品だが、
40年前の作品とは思えない出来栄えだと思いませんか。
清水靖晃は、バッハのコルトベルクを東京芸大出身のサキソフォン奏者と
演奏しているほか、古いところでは、アルファレーベル時代の吉田美奈子の
諸作にアレンジや奏者として参加している。
そんな清水靖晃の才能が、イギリスの老舗の音楽雑誌”The Wire"で2018年に大きく取り上げられたのは、記憶に新しい。
この記事の最後に、もう一曲だけリンクを貼りたいと思う。
ピアノは坂本龍一で、ジャズを演奏している。