最近テレビなどのマス媒体で、音楽家のことを「アーティスト」と言っているのを聞くと
「?」と思ってしまう。
それほど遠くない昔まで、日本では音楽家のことを「アーティスト」と呼んでいなかった。
英語圏では分からない。
しかし、日本語の語感や広告業界の雰囲気から察すると、何だか安っぽい感じがする。内容のなさをカバーするために、無理してアーティストと称しているような気がしないでもない。
そういうこともあり、「(音楽家=)アーティスト」という言葉は日ごろから使っていない。
それでもタイトルに、最強”アーティスト”と入れた。
音楽家をアーティストと呼ぶのは生まれて初めてだと思う。
実は、「バズる」も生まれて初めて使った。
今っぽくするために。
筆者と同世代や上の世代を取り上げる際のポイントは、
予期せずに、いや、図らずも、今っぽいかどうか。
というわけで、タイトルも今っぽくしました。
あいみょん(今っぽい!)がTwitter(当時)だったと思うが、ツイートしたら
ここに飛んで来た若者が多かったそうだ。
視聴回数が1200回くらいの時のことだったが。
無理せずに途中まで視聴すれば良いと思います。
屋外コンサートに関わらず、口パクでカラオケです。
何だかダメな音楽家の見本のようだが、この2人は只者ではない。
向かって右側が菊地成孔(きくちなるよし)で、左側が
小田朋美。
菊地成孔は、前の記事で紹介したので省きたいと思ったが、1年未満で
この動画の視聴数が40万から50万に上昇したことに触れてみたい。
1年で大体10万回をカウントしてきたのは、この手の音楽としては想像できない回数だと思う。
菊地成孔は、ソニーから専属契約を打ち切られた後、このファイナルスパンクハッピー を始動させた。自らのレーベル、TABOO、つまり俗に言うインディーズでの活動だった。
再生回数が増えたのは、
髙橋一生主演の「岸辺露伴は動かない」の音楽を菊地成孔が担当していたためではないかと想像している。「岸辺露伴ルーヴルへ行く」の音楽も担当した。
いや、(第2期)スパンクハッピーをネット上で大々的にPRし、過去の音源を再発したためかもしれない。
それはともかく、小田朋美は、東京芸大の作曲科出身で、折り紙付きの実力を持つことは間違いない。
芸大の作曲科卒・修了のピアノは良い。心に響く。
是非とも、これは最後まで聞いてください。
KORGという楽器をすっかりコントロールしていると思いませんか。
何故か、菊地成孔とは、彼のオーケストラ、DC/PRG(デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン)参加など、昔から繋がりがある。
これも冒頭の動画と同じユニット、ファイナルスパンクハッピーの楽曲で、タイトルは
「スムースエスカレーター」。
新宿伊勢丹の店内が動画の舞台となっている。
「ピチカートファイブと似ている」と表現する人たちがいるが、本当かなと思う。
好き好きだが、音の重ね方が全く違う。
ファイナルスパンクハッピーの初リリース作品の最後を飾る曲が、この「ミント・エクソシスト」。
小田朋美のピアノをバックに、菊地成孔と小田朋美でデュエットする。
途中で訳のわからないセリフが入るが、せっかく良いラブソングなのに
何でだ、と思った。
けれども、今となっては「それもありか」と考えるようになった。
最初聴いた時、この曲は、アントニオ・カルロス・ジョビン作
”fotografia”(ジョビンのピアノ伴奏で、ナラ・レオンとのデュエット)に
雰囲気が似ていると思った。
コードは、7th以外にほとんど同じものがないようだが、でも
何だか似ていませんか。
菊地成孔は、ジョビンのファンで、
担当していたラジオ番組「菊地成孔の粋な夜の電波」のシーズン1の最終回(2011年10月)で三月の水を流して、日本語訳を朗読し、長い解説をした。
2011年は、そう、3.11があった年だ。
三月の水は、3月に掛けている。
※YouTubeで録音を聴けるので、ご視聴してください。リンクは貼りませんが。。。
これは完璧な想像の範囲に留まるけれども、菊地成孔がアイデアを小田朋美に披露して、小田朋美が完璧に解釈して曲を仕上げた、というふうに見ている。
アイデアというのは、もちろんジョビンへのオマージュだ。
ピアノ伴奏だけで女性歌手とデュエットするのは、録音媒体では初めてだったと思う。
ナラ・レオンとのデュエット"fotografia"を脱構築して、まったく新たなものに仕上げた小田朋美の実力は驚くべきものだ。
小田朋美の魅力は、本当は次のような(動画の)音楽にあるのではないかと思っている。
小田朋美は、作曲を手掛けている。
詩人の三角みづ紀の作品に曲を付けている。
正確なデータを確認したわけではないが、小田朋美と菊地成孔が初共演したのは、
このdCprG(デートコースペンタゴンロイヤルガーデン)でだったと思う。菊地成孔が勧誘してバンドに誘ったものだ。
カオスにありながら、圧倒的なリリシズムが溢れ出す。
2000年からごろから、ライブハウスで演奏していて、スタンディングの観客(ばかり)がずっと踊っていた。
けれど、「?」ってなると思います。
リズムが合っていないように感じる。
いろいろと難しいことは抜きにして、簡単に言うと、ジャストのリズムから前後に少し外すと、よりグルーヴが生まれるという理論に基づいている。
菊地成孔自身も、スイングジャーナル他の紙媒体で、そうした考えを披露している。
こうした理論は、日本においては、私が知る限りでは、1970年代後半に、細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏が初めて研究したことだった。
このバンドは、2011年に、アメリカの名門ジャズ レーベル、IMPULSE!と、アジア初の契約を結んで2枚のCDをリリースしている。
小田朋美が参加したのは、2枚目のリリース後だった。
さて、ファイナルスパンクハッピー の前身は、スパンクハッピー で、
第1期と第2期がある。
第2期の歌姫が、岩澤瞳という女性だ。
ネットでは、長いこと伝説のように語り継がれているが、
割愛したい。
次の歌が、第2期のスパンクハッピー の代表曲「普通の恋」である。
私は、2000年ごろから菊地成孔に関心を抱き、CDや著書(Tシャツなどのグッズも)をいくつも購入している。
しかし、スパンクハッピー の存在は知っていたが、正直言って興味が持てなかった。
だが、この「普通の恋」だけは別で、すごいと思ったので、何度も聴いた。
YouTubeの再生回数は、10数年前は、1000回くらいだった。
それが口コミや菊地成孔自身の他の音楽活動の相乗効果によって、
7年前に2万になり、今日聴いたら33万回だった。
この「普通の恋」は2曲入りのマキシシングルCD(2004年)で、10数年前は絶版だった。
当時、オークションでは中古が800円あたりで取引されていた。
それが、7年前には中古が8000円の値を付けてびっくりしたのを覚えている。
(今でも、ほぼ同じくらいの価格のようだ)
話が大幅に逸れてしまった。
岩澤瞳は、音信不通で行方が分からないそうだ。
この第2期のスパンクハッピー も確かに素晴らしい。
ただ、ファイナルスパンクハッピー は、私の中ではもっと素晴らしい。
惜しいことに、コロナ禍にあって、うまい具合に活動ができなかったようだ。
再始動を望みたい。
小田朋美の才能をもっと聴いてみたい。
最後に1stリリース作から私好みの曲をお贈りします。
といってもリンクを貼るだけですが。
最後は、テクノのパロディー。