神保町にはアートを生業とする店が少なくない。
夏目書房もそうした店のひとつだ。
アート関連の古本屋が本業だが、絵画やアート作品も多く扱っている。
一昨年まで、近くの別のビルにあったギャラリー「ボヘミアンズギルド」を
本店の2階に移転し、時々、展覧会を開いている。
3月には、ゲルハルト・リヒターの展覧会が開催された。
紛れもない抽象画の小作が2点ほどあったが、プリント(印刷)されたエディション200部あるいは500部の作品の方が私には訴えるものがあった。
ロンドンのアートグループHENIのエディションという。
HENIのホームページを見ると、ダミアン・ハーストなどもエディションに加えられていた。
アルミニウムに特殊なプリント技法(クロモジェニック・カラー・プリント)を使用し、抽象画のエディションとして完成している。タイプCプリントとも呼ばれるようだが、複数の写真を合わせたり、レイヤーしたり、アブストラクトな色彩を表現するそうだ。
まあ、そんな難しいことを考えながら、鑑賞していたわけではないので、割愛しても良い知識だと思う。
リヒターの有名な作品集「Landscape」に収録されている作品は、どれもOil on canvas、つまりキャンバスに書いた油絵。当たり前だが、リヒターの真髄はプリントではない。
会場には、油絵が2点展示されていたが、あまりにも小さいので、印象に残らなかった。しかし、これが本筋なのだと思う。
私が複製品(語弊があるけれど)の方に関心を示したのは、見る目がなかったからだろうか。