スウェーデンの家具のことについても書かなければならないと思っていた。
最初に買った北欧のイージーチェアは、ブルーノ・マトソンのミナだった。新宿にあるビームスJapanで購入した。1998年の秋だった。
ただ、このプロダクツの良さが分かったのは、つい最近のことだ。段々と理解できたという感じだった。
ビームスがスウェーデンのアスプルンドのプロダクツを扱い始めたのが、確か2000年くらいだったと思う。専属デザイナーにトーマス・サンデルがいて、彼の作品が並んでいた。その後、彼のサマーハウスがエルデコ日本版に公開された。
これは私の興味をとても引いたんだ。
それまで注目していた若手のデザイナー(これは大御所ではないという意味だ)とは異なったシンプリシティを持つ意匠だった。
だが、そのなんて言うのか、文脈=コンテクストがつかめなかった。どういう経緯で、彼のプロダクツが生み出されたのか、その歴史的な位置づけを知りたかったんだ。
今では、ネットで調べると情報が得られるけれど、当時はほとんど情報がなかったんだよ。
ここ2~3年の間で注目しているのは、スウェーデンのMetropol Auktionerなどのサイトにアップされているアンティークのプロダクツだ。イギリスやフランスとも違う質感があり、とても惹かれる。
それで、ああいった、シャビーでラスティックな感じがある、アンティークのプロダクツから派生したデザイナー家具がスウェーデンにはあるのではないか、と思い始めたのが、ここ2~3年のことなんだ。
その延長上に、トーマス・サンデルのプロダクツが位置づけられるのではないかと思っている。
もちろん、デンマークのコーア・クリントやオーレ・ヴァンシャーなどが、古典的な家具のリデザインを試みているのは有名だけれど、スウェーデンでは、また違ったニュアンスを持ってリデザインが行われていると思った。
話が方々に飛ぶけれども、Yngve Ekstrom(発音が分からない)のArka chairについて言えば、やはりスウェーデンのアンティークの系譜に連なっていると思う。
Arka chairを初めて見たのは2000年のことだ。
スウェーデンのサイトzimmerdahlとWigerdals Varldだった。どちらが先か覚えていない。すぐに売れ切れてしまった。
Arka Chairは、例外だった。直ぐに理解ができた。イギリスやアメリカのスポークチェア、ウィンザーチェアをたくさん見てきたからだろう。
直ぐに買いたかったが、資金的に苦しかったので見逃してしまった。そしてそれ以来、しばらくブックマークしているサイトには現れなかった。
現物を見たのは2002年か2003年だったと思う。南青山のイデーに偶然ディスプレイされていた。
見事なリデザインだった。
それで、こうしたスウェーデンのアンティークプロダクツの系譜というものを辿ると、18世紀末のグスタヴィアンスタイルに連なるかもしれないと思ったのが一昨年のことだった。
同時期に日本版のエルデコでも取り上げていたらしいけれど、私が見たのは、女性雑誌のSPURの昔(2000年)のインテリア集だった。
スウェーデン系のフランス人ら2人のコーディネートが取り上げられていて、「(2000年当時の)パリで注目を集めているスタイル」と書いてあった。わざわざスウェーデンで買い付けてパリに運んだ物だった。
装飾を極力排した滑らかな曲線。
このSPURの写真では南フランスに特有の様式美もうかがえたので、本当のグスタヴィアンスタイルかどうかは疑問があるが、まあとにかく、これでスウェーデンのアンティークの源が少しばかり見えてきた。
しかし、まだスウェーデンの、この系譜のモダンデザインは分からないことが多いし、生まれて初めて見る家具も多い。
本当に未知の領域だと思う。